告知/Seia
かかえてしまったから
もう片方の手で
かなしみをおさえこもうとする
ようやく
封印されたのか、
軽くなったスチール缶を
ゴミ箱の投入口に差し込んで、
手を放す前に
一瞬、
ためらうも、放す。
ついでにさっきの筒も、
今度はためらいもなく
すとん、
と入れてしまう。
みらい
と
かなしみ
を捨てたら、
気付けば麻酔は
切れていた。
清々しい気分で、
最近出来た展望台へ登っていく。
かこん、
百円を投入して、
望遠鏡に目を近付け、
倍率を調整していくと
「いつか」
と前方のレンズに刻まれていた。
世界を目に見えるものと
そうでないものに
わけるとしたら
いつかは目に見えないもので
いつかまた会えたら
いつか読んだ本には
いつか、いつか、
いつかくる、
告知された期日まで、
明日からなにをしようか。
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