訃報に涙されるのは 一体誰だ/創輝
 

蟻の死に涙できる僕だったら 僕の死に涙するものもいるかもしれなかった
こんなに
死というものを考え込まないでいたかもしれなかった

それでも
僕は見つけてしまった 人の死を
誰かが 特別その死を悼み 悲しむことが無い、恐ろしい死を
目をそらさなかったのは 僕が強いわけでもなく
ただ 逸らした先に映るのは一人で朽ち果てようとする僕の屍だろうと思ったからだ
僕は その人の死に 僕が一人で死ぬことが無いように保険をかけたのだ
そんな 僕の欺瞞 僕の傲慢


偉い人 成功した人 優しく 世界の誰からも愛された人

その人の死に 世界はいつまでも涙する

その人が生き
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