鰯の頭 (想起させるものに、忠実に)/乾 加津也
 

陸に上げれば
日保ちのしない魚で
「卑しい」が名前の由来だと

腐って臭うので
頭を、柊の葉の刺と合わせて
節分に鬼の退治といわれた、モノで
これがまた平安と呼ぶ
わたしには途方もない時代に端を発すると
インターネットは自慢げに
おまえをとんとん弄ぶ

鰯の頭ほど値打ちがない
という意味で
だれにもかれにも取沙汰されるわけだが
これが一転、信心ともなれば
ふかく首(こうべ)を垂れ、どこかのだれかはおまえの前で
熱心に願掛けなども、するかも知れぬと

だから、どうでもよい魚かといえば
決してそうでもなく
卑しくとも
稚魚なら、シラスとして食するまた別
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