海を抱く/RT
 
目覚めの呼吸が
ぽこっとまあるい泡になって
光差す天井へ
ふわりふわりと上っていった

仰向けのベッドで
それが弾けて消えるまで
ぼんやりと目で追っていた

ここに置いたはずの眼鏡はどうしたっけ
手探り
波打つ視界

やけに冷えてしまった指先を
包むのは自分の逆の手のひら
交互に、気休め程度に

部屋を満たす液体に
肺が押しつぶされそうだ


神様、えらを下さい
少しは楽になるでしょうから

うそだよ神様
楽になんてなりたくない


塩辛い喉
銀色のプランクトンがちらつく
水圧でベッドから起き上がれない

月が移ろえば潮は満ち、潮は引く
その時までこの重さは
確かに私のものなのだと
海を抱く
時が解決してしまうという
迷信を憎んで



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