沿線暮色/梅昆布茶
 
平凡な沿線のこの街に
夕暮れが密度を増してゆく一刻

零れ落ちそうに客をのせて電車がレールを軋ませ
商店街は夕餉の想いに満たされて

帰ってくるあるいは帰ってこない主人を待つ願いも時間が経てば
アジフライと同じ半額の値札を貼られてゆく

しだいに灯が闇に浮かぶ精霊船のように
川面をたゆたいはじめるこの夜にむかって
幾多の想いが何処からか集結してくるのかもしれない

街はやがて
愚かな酔漢どもに占領され

騒々しさに愛想をつかしながらも
そのなかに交じっている自分にふと気づくだろう

眼に映るものすべてが
夜の密やかさにそっとくるまれてゆく

夕暮れのゴンドラに乗って夜がやってくる

それはさながらさびしい蝙蝠のように
逆さにぶら下がってあしたを待つのだ


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