風の子の弔う/凛々椿
 
ひゅ
ひゅるん て


あげん小んか孫やったとが 今年でもう二十になったとよ
来月から東京さ住むて
べにでめかしようて もう立派な大人ばい
うちの腰もひん曲がるわけよ
もう野菜もよう作らんちゃ
なさけなかね
なあ父ちゃん
うちなもうずうっとカレーば食べてなかよ
もうずうっとよ
父ちゃんの作るカレーはほんなごつうまかった
うちん庭で採れたトマトとたまねぎに
娘婿んこしらえた煮干しばしゃげて息子の採ってきたきのこばくつくつ煮て
あげんうまかもん もうこん世にはなか
どうせなら十五年がとこさえてのうなってくれたらよかったとにねえ
そうこいたら娘にも孫にも笑われよったば
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