海流の街/梅昆布茶
 
目覚まし時計の呼ぶ声に乳白色の霧をかきわける朝

夢の続きの小路をたどればあの古い石の門がが見えるかもしれない


丘の上の教会には孤児院が併設されていて僕の友達がいた

通りを浜のほうへまっすぐ行けば自衛隊のヘリコプターの発着所がある


逆に山のほうへ向かえば僕の学校や五稜郭公園さらには水源地へと傾斜はせりあがってゆく

僕の記憶はこの箱庭のような風景を忘れずにいるようだ

海風がかよう街で遠洋漁業の基地でもあるそこは

独特の漁港の匂いにいろどられている


いくつかの海流がながれているそこで

朝市や修道院の佇まいを感じあらくれた漁師たちの声を聴いていた

海峡をへだてた山並みは遥かな別世界におもえたものだ


すでにないであろう風景がぼくのなかにはある

かつていだいたさまざまな思いとともに棲みついている


だからときどき夢の中で潮のかおりをかぐのだろう

海峡の海鳴りが聴こえるのだろう

連絡船の霧笛がなるのだろう

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