愛と誠と福本豊/平瀬たかのり
下手な子ほど上手くなるのは早いんやから」
少年たちは知らない
オッサンがかつて
からだが思うように動かないひとたちの施設に慰問に行き
「何をウジウジしとんねん 外でキャッチボールやろうや!」
そのことばが新しい
太陽の下の野球を生んだことを
少年たちは
オッサンをあっという間に大好きになっている
オッサンは
世界の盗塁王と呼ばれていたこともある
だからオッサンは国民栄誉賞の候補にもなった
でも断った
「そんなん貰たら立ちションもできへん」
さすがに新聞記者は立ちションを立ち呑みに変えざるをえなかったわけで
とうとうガマンできなくなって
「代打ワシや!」
バッターボックスに立ってしまうアロハのオッサン
マウンドの背番号1とオッサンの
本気の目がバチバチ火花を立てている
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