想うからだ/たちばなまこと
からだにはいつも火の精が住んでいて
受け入れる場所で炎を上げる
紅をさしたような君の唇からは
水の精がそっと頬を濡らす
「知っていますか、
とってもやわらかいんだ。」
強く抱かれて締めつけられて
鼻を通って抜けてゆく声が
不意に漏れる愛の かたちをしている
不器用な手
真っ直ぐに黒目がちの奥深い瞳
君は全身の眼を持っていて
全てをこのたましいに向ける
全てには答えられずに
ただ漏らさないように
末端までを感覚だらけにする
肩や肩甲骨の山なんかを手探りで登って
やわらかいというのなら隙間なくはりついて
…つながれるのかな
いえないけれどきいてみた
そうして君は名前をほろほろと
降らせ敷きつめながら炎に包まれる
炎にはすでにあめ色の呪文を教えているから
君は効き目に巻かれながら白い龍になる
大きな手
「それはそう思うかも知れないね。
だってあなたの手、小さいもの。」
君の左の手の平に右の手の平を合わせて
君の大きさを 再び知る
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