ショッピングモール/片野晃司
 
して夜に半月映るし、ほら、かわいい服とかかわいい靴とか、化粧品たち、小物たち、ほら、あなたを彩りよく盛り付けて、ショッピングモール、床も靴も脚も腰もつやつやでね、店舗デザイン、あちこちでたべたものが姿を変えてわたしになっていってね、ディスプレイ、おいしくてとまらなくてね、ほら、もっと素肌見せてほしいよね、粘膜つやつやだしね、ほら、やっぱりたべちゃうのかなわたし、あなたを唇から粘膜へぐるりと裏がえしていって、たべごろのそれら服飾店街区画、ほら、はらわたしゃぶってしまうわたし、ほら、あなたがやわらかく消化されていって、わたしがすこしあなたになる。ほら、骨をしゃぶって、もうすこしあなたになる。唇から喉、その奥へまっすぐはいっていくと背骨のうらがわごつごつとS字にカーブして両側に肋骨、遊歩道を軸線としてショッピングモール北区画および南区画、ほら、完璧に対称系でしょ、たべられるのもたべるのも。


詩誌ガニメデ55号2012年8月掲載

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