七月砂丘/佐東
(波が、足もとで。)
うまれたばかりの波の子らが
ころころと笑いあう
くるぶしの
ちいさな砂が
星のかたちの足あとをつけながら
ひそやかにのぼってくる
ふくらはぎの
わすれてしまうほど
くすぐったいのに
涙しかでないなんて
(それは、星の砂ではありません。)
光の孔雀が羽根をひろげて
ぽうぽうと鳴きながら
うまれてゆくしんでゆくをくりかえす
くりかえしてる
やわらかな波が
胸の中から
はみだして
白い足あとをつけながら
ひきしおを追いかけてゆく
夏のはじまりの
灯火にゆれる砂丘の稜線
(ここまでが、海で。)
(ここからが、夏で。)
あいまいにしている
境界線は
水面をすべってゆく海鳥の
たしかな羽毛に
白くにじんでゆく
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