夏の伸びしろ/
佐東
夕立が夏の庭を
生ぬるい微炭酸の海に変える
夏草の影から立ち昇る
気泡の一つ一つには
ちいさなさかなが
ねむっている
(さかな)
(さかな)
しばらく中空を
ゆうら
と漂ったのち
こきゅうをなくして
落ちてくる
(さかな)
(さかな)
(あおむけ)
(の)
きみは
ぴくりとも動かないさかなを
胸にしまいこんだまま
いつまでも立ちすくんでいた
幼い夏の庭で
とうめいなさかなと
ちいさな水の影と
細ながくのびてゆく
夏の背と
戻る
編
削
Point
(6)