夏の伸びしろ/佐東
 


夕立が夏の庭を
生ぬるい微炭酸の海に変える

夏草の影から立ち昇る
気泡の一つ一つには
ちいさなさかなが
ねむっている

(さかな)

      (さかな)

しばらく中空を
ゆうら
と漂ったのち
こきゅうをなくして
落ちてくる

(さかな)

      (さかな)

(あおむけ)

      (の)

きみは
ぴくりとも動かないさかなを
胸にしまいこんだまま
いつまでも立ちすくんでいた

幼い夏の庭で

とうめいなさかなと
ちいさな水の影と

細ながくのびてゆく
夏の背と




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