なんて思い出が/平瀬たかのり
タイガーマスク、好きなんだね
え
ほらさっきのローリングソバットじゃん
あ、うん
ねえ、見てて
クルリッ! 蹴り足まっすぐ伸びきってちゃんと一回転
ボク、口あんぐり
へへへ、わたしも好きなんだタイガーマスク
それから
今度は空を指差して
ほら見てあれが金星よ
ボクは彼女をずっと見ていたかったけれど
ああ、うん、そう、へえ、なんて言いながら
そのときいちばん明るく光っていた星を見ていた
なんて思い出があったなら
ぼくはどんなこれまでを過ごしてきただろうな
戻る 編 削 Point(3)