なんて思い出が/平瀬たかのり
 

 タイガーマスク、好きなんだね
 え
 ほらさっきのローリングソバットじゃん
 あ、うん
 ねえ、見てて
 クルリッ! 蹴り足まっすぐ伸びきってちゃんと一回転
 ボク、口あんぐり
 へへへ、わたしも好きなんだタイガーマスク
 それから
 今度は空を指差して
 ほら見てあれが金星よ
 ボクは彼女をずっと見ていたかったけれど
 ああ、うん、そう、へえ、なんて言いながら
 そのときいちばん明るく光っていた星を見ていた

 
 なんて思い出があったなら
 ぼくはどんなこれまでを過ごしてきただろうな 
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