偽熱の午後/もっぷ
果たされない約束が遠のいてゆく
博愛は封印されて
初夏の風鈴のように ときに
さやかに りん、と在るを語るでもない
ゆく道は涯てを知られず
帰り道はすでになく
芥子の花のうなだれて
佇んでいる
ここ、
小鳥はさえずる運命を捨てて
電線で押し黙り
街では
音のない「スタバなう」が行き交い
年中の電飾が途切れる暇(いとま)を得られない
街路樹は ただ
視ている
ここ、を
約束も博愛も
ゆく道も帰り道も芥子の花も
小鳥も「スタバなう」も そして
電飾も
その街路樹の視るここ、の
そのフラスコの底に沈殿している
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