遠くから来て、遠くまで行く/六九郎
我々は2つに分けることが出来る。
まず、生まれ落ちた場所にしっかりと根を張って暮らしている人。
彼は仲間を大切にするし、誰とでもすぐに打ち解けられる。
そこには安定があり、停滞があり、退屈がある。
一方は、根っこを千切るように引き抜かれ、全く新しい場所に植え替えられて生きる人。
彼は人付き合いが嫌いなのではなく、付き合い方を忘れている。
そこには変化があり、チャレンジがあり、不協和音がある。
俺の感じる飢え、アンフィット感、不全感の正体はおそらくそういったことだろう。
充足が得られないのは根っこから充分な養分が吸えていない証拠だろう。
引き抜かれたのか自分で引きちぎったのかは、もう忘れてしまったが。
根っこが千切れてんだからしょうがないんだよ。
せめて立ち枯れしないようにやっていくしかないんだよ。
次の世代、また次の世代が、ここで立派な木に育つ日が来るかも知れないし。
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