あの猫の名前はマダナイっていうんだ、/木屋 亞万
 
を開くというのはやはり特別なことだなと感慨にふけっていた

「山椒魚は悲しんだ。」と読めば、
男が逝ったのに女は逝けなくて、そのことすら言えないでいるんだろうと言う
「いやなんです / あなたのいつてしまふのが――」と読めば、
そうだろうなと言って笑う
「メロスは激怒した。」と読めば、
女が勝手に逝ったことに激怒するタイプの男は器が小さいという話になる
「ではみなさんは、そういうふうに川だと云われたり、乳の流れたあとだと云われたりしていたこのぼんやりと白いものがほんとうは何かご承知ですか。」
という問いには、したり顔で精液だろう?と言っていた

「ある朝、グレゴール・ザムザが
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