名詩『夕焼け』の娘の感受性/夏美かをる
んと収まる完璧な四角形をしていた
いわゆる優等生カラーの制服の中に
自分を閉じ込めることによってしか
自身の存在価値を護れないでいた私は
大学ノートのまっすぐな罫線上に写し取る文字の隙間から
いつでも勝手に飛び出してしまう自分の感受性が
疎ましく、また悲しかった
あれから30年余りが過ぎ
『夕焼け』の娘と同様の生真面目さと不器用さを
そうとは知らずに持て余していた無口な中学生は
白髪と皺がしっかり目立つ無駄口の多いおばさんになったが、
相変わらず‘娘’の気持ちは分からない
しかしながら
皮下脂肪と一緒にたんまり溜めこんできた
もろもろ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(26)