バンジージャンプを1階から/木屋 亞万
だが歩くことは苦手だ
目的地が遠い
足が重い
つい飛びたくなるがまだ真上にしか飛べない
一度飛んだら自力ではなかなか降りてはこれない
木に登りすぎた子猫のようだ
二度目
始めてふわふわのケーキを口に入れたとき
「ふぁっ」という言葉を残して私は空を漂っていた
いくつかの赤い風船を追い抜かし
飛行船に頭突きして
雲に髪を濡らしながら大気圏まで浮上して
ハレーションを目の隅で見たあとで気を失った
目覚めたときには大西洋上の船に救出され
フランスの病院へ搬送されるところだった
すんでのところで水になり人の手から逃れて
セーヌ左岸へ行きついた
蒸発しながら見つめ
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