わたしの耳は/
もっぷ
ひろがる風景は立ちすくむほどに
一面の無言のポピーの原っぱ
あとは空だけ、ほかに何もない
音、振り向くと一軒の民家があった
蜘蛛の糸にすがる、
そんな心地ってこんなだろうか
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夢から落ち寝過ごしたことに気づく
すでにきょうを始めているあちらこちらからの
生活の音、風の音、何かの音
みんなここからしか聞こえない音
かつて住んでいた部屋の、
細い道をはさんで揺れていた木木の葉は
わたしの耳に潮騒を運んでいた
もう戻れない日日の、
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