存在するものはすべて善である/HAL
ぼくはサイゴンの中央広場で公開処刑を視た
ベルリンの壁が崩壊する前の年にポーランドを訪れ
クラクフからトラバントのタクシーで3時間余り掛かる
アウシュビッツ=ビルケナウ絶滅収容所にも赴いた
そして資金繰りに行き詰まりたった400万を闇金に借り
奴等は執拗にぼくに掛けた生命保険のため
いまもぼくをマグロ船に乗せ
インド洋に沈めようと追いつづけている
それでもぼくは信じたいのだ
綺麗事だと言われても偽善の言葉と言われても
信じる信じないの裁量権はぼくにあるとの理由を以て
アウレリウス・アウグスティヌスが残した
“存在するものはすべて善である”という言葉を
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