一つの言葉/灰泥軽茶
 
一つの言葉を想いつづける

その言葉は今も昔も変わらぬ凡庸な言葉であるけれど

日々想いつづけることによって

その言葉は私の中でいろいろな形や色をなして

広がりまたは消えてなくなりそしてまた現れる

そうして私の中の言葉はだんだん成長して

音を発することによって空間や人々を震わすことによって

私の中で密度や影を生み出し大切に育てていく

またいろいろな感情が爆発して記憶装置が発動して

何気ない一言が鮮やかさを失うことなく

思いかえす度にこだまして永遠に

あの時あの瞬間に戻れる

一つの言葉の不思議さを想う




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