一つの言葉/灰泥軽茶
一つの言葉を想いつづける
その言葉は今も昔も変わらぬ凡庸な言葉であるけれど
日々想いつづけることによって
その言葉は私の中でいろいろな形や色をなして
広がりまたは消えてなくなりそしてまた現れる
そうして私の中の言葉はだんだん成長して
音を発することによって空間や人々を震わすことによって
私の中で密度や影を生み出し大切に育てていく
またいろいろな感情が爆発して記憶装置が発動して
何気ない一言が鮮やかさを失うことなく
思いかえす度にこだまして永遠に
あの時あの瞬間に戻れる
一つの言葉の不思議さを想う
戻る 編 削 Point(3)