自画像/アラガイs
 
先でこそぐように口の中に運んだ
(いまに苦しみがわたしの本質を曝け出す
わたしはわたしの体内を使い、苦しみを導きだすことによって芸術本来の在り方を希求するのだ)
口に含んだモノをゆっくり少しずつ吐き出すと、顎から鼻筋にかけて、また目元を一周しながら額へと塗りつけた。
太郎の顔面はみるみるうちに赤と青の混合油にまみれ
もはや仮装された化け物へと変質を遂げていた 。
部屋じゅうに散らばった絞りかけのチューブは死体を喰らう蛆だ 。
この場所に時間など存在はしない
こうしてペイントに塗り潰された自分の顔をみつめていると、未知のナニモノかが表れてくるではないか
それはワーグナーが狂
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