習作、起点としての書き出し/Ohatu
 
 空には雲がなかった。ひとつも。
 その先にあるはずの宇宙を疑わせるほどに青かった。
 それについて考えていると、
 日差しの眩しさや温かさ、
 芝のにおいやこそばゆい先っぽ、
 それから、遠くのほうから聞こえる子供の声なんかが
 僕を、何もないほうへと呼ぶのだ。
 声も出さず、手も振らずに、不気味に笑って。
 
 そんな誘惑があるものだから、僕はまず
 考えるべきか、そうですべきでないか、考えねばならず、
 フラクタル的にまどろんでゆく。
 どんどん図形は小さくなり、かわりに思考は複雑になる。
 そうして、その思考が、いよいよ消えようかというとき
 僕は、
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