父/永乃ゆち
 


2001年。私は結婚をした。
たった一つの条件を付けて。
それは、子どもはもうけない、というものだった。


夫は私の話と気持ちをよく理解してくれ
了承してくれた。




父は母と離婚後3度結婚したそうだ。
だから、あちこちに異母兄弟、異母姉妹がいるのだろう。


けれど、私は私で終わらせたかった。
私の中にある『父』の血は私で終わらせなければ
親が子を殴るという不幸が繰り返されるような気がしたからだ。



結婚して12年。
夫婦二人で気ままに暮らしている。
夫とは友達のように接している。
未だに仲が良いのは周りも認めている。


これで良い。
このまま私が終わってしまえば。
少なくとも一本の血筋は途絶える。




あの日鏡を見ながら
父の顔を想像していたことが
今では気味悪く思えて仕方がない。


早く。
早く終わらせなければ。


『その時』を今か今かと
待ちわびている。



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