遠吠え/Yuuki
 
月が蒼白く空を照らすころ
誰かの遠吠えが街にこだまする

悲しみのかけらを風に乗せて、
残響をひびわれた壁にぶつけながら
届く当てのない空気の振動となって
コンクリートに吸い込まれていく

閉じられた商店通りに転ぶ木の枝と
昼の暖を残す土埃によりかかり
眠る蝶の横をすり抜けて
透明なその存在は確かに駆け抜けた

木の看板はカランと音を鳴らし
ほのかに酒の香りが揺れて
喧噪の消えた空間に
カラスが虚空な目を向けた

街に人はいなかった
ただ一人の傍観者を除いて
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