ゆうやけこやけでまたあした/笹子ゆら
 
石をけりけり、おうちに帰ったのだ。かわいらしくはない顔を、無表情でかためながら、勝手にはならぬ小さな石を、いっかい、にかい、蹴ってはどこかに飛ばしてしまう。新しい石を探して、また、いっかい、にかいと蹴りながら、わたしはちょっぴりセンチメンタルで、わたしはちょっぴり、なんとなく、さびしかった。


パイプオルガンの音が聞こえたので、わたしはおうちに帰ることにする。なんの曲だか知らねえが、なんとも湿っぽいおんがくだ。不満げにくちびるとがらせながら、わたしは影をふみふみ歩いて帰る。
なまえの分からぬどこかの誰かは、わたしのなまえを遠くでよんで、またあ、あしたねえ。か細い声で叫んでらした。ええ、ええ。わたしはうなずいて、ふりかえって、ひかりの加減で見えない顔を、やっぱりなんだか、うつくしくねえなあ。そう、つぶやきながら、おんなじようにことばを返す。手をひらひら、ふったりしながら。


ゆうやけこやけで、また、あした。}

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