ブリキの森と紙の古城とウルサい湖畔の魔法/村上 和
 
をそろえて出てくる
数はそんなに多くないが
何かに感化されているのか
士気は高い

横に広がる隊列を組み
ざっざっとオオカミがでるという森へ入っていく



おしゃべりな魔法使いは言う
魔法とは皆さんそれぞれの
心の中にあるのです
ありきたりな言葉だ
聞く者たちの中にあくびを噛み殺す姿が散見される

演説が終わった後
満足もしていないのに
参列者ににこやかにお礼を言い
また参加してほしいと案内をすることになる

伝えたいことは文字通りなのだが
使い古されている
言葉を変えなくてはいけない

その魔法使いの住処は
ほとんどの場合と同じく
森の中にある



物語を知っているだろうか

弓を引く音
獣の匂い
誰もいない城
呪文
散乱する鎧の破片
血の跡と牙
ひるがえる杖と厚手の衣

満月の下
影絵劇のようなシルエット
遠くから
紙を裂いて吠えるような
声が聞こえる
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