ジャポネーゼ・マンドラゴラ。/元親 ミッド
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本来は、さくらは白い花なんだけど
死体の血を吸うから、ほんのりさくら色に色づくんだって。
その証拠に、さくらの幹が傷ついてしまったら
人の血の様な樹液がでるんだって。
だからさくらは手折ってはいけないよ。
間違っても、手折ってはいけないよ。
手折れば、死者が悲鳴をあげるんだよって。
彼女があのさくらの下にいるのを僕はまだおぼえてる。
暗い土の中でさくらの根が、キミの白い裸体に根を這わせ、
絡まって、吸って、かじり、舐めまわして、挿入し、
その体から血の気を奪って、
毎年、彼女を限りなく白い骨にしてしまうんだ。
そうしてあの蕾を膨らませてる。
初々しいさくら色したあの蕾をね。
もうすぐ桜は咲くんだろう。
美しい色で、あの青空を覆うだろう。
僕は耐えられるだろうか。
彼女の声を聞きたくなって
あの桜の幹を手折ってはしまわないだろうか。
ふと、そんな不安が胸をよぎる。
桜の開花宣言は、僕にとっては警報に他ならないのだ。
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