ジャミラが過ぎる/平瀬たかのり
 
とどおり
 ぼくは四年生、仲直りのきっかけが
 そんなジャミラごっこだったことがあった

 でもな、子どもらよ
 彼が生きたのは
 遠い星に不時着し
 置き去りにされ、見捨てられ
 みにくい姿になってしまった宇宙飛行士が
 復讐にやってきた地球で
 ウルトラマンに倒されてしまうという
 お話の中なんだ

 きみたちもきっと
 ともだちとひどいケンカをすることもあるのだろうな
 でもそんなとき
 絶交だ、なんて言うな
 そんな言葉
 覚えても絶対につかうなよ

 ぼくに
 もう会えないひと、ひとり
 もう会わないひと、ひとり

 うん、今でもぼくは思い出せる
 ウルトラ水流を浴びて
 どろどろに溶けていった彼の
 あまりに悲しい泣き声を

 ぼくはゆっくりアクセルを踏む
 遠ざかっていく小さなジャミラの
 青い半ズボンから伸びたしなやかな足が
 にじんで見えることもない
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