Midori/月乃助
 
は海の厨子
艶かしく尾をよこたえ
爪弾く琴の音が、髪をふりみだし
叫び声を あげはじめる


 海は、鞭うたれ
きっちり 紡いでいたはずの水の糸をとく
心をさかなでする 荒れ狂う波


( あいつは時に琴線をたちきった
  海男神さながら
  海獣たちが玉杓で水をそそいだ
  それは、伝説 )


 指をやすめれば
無声の 波はすがたをけし
鏡の海のおもてに 星の明かりが
往き惑い
寂々


 わかろうと
論理も 哲学さえも
なんの役にもたちは、しない


 あいつの魂は、海の炎の湧泉
螺旋の途を さかのぼる
わき目も触れず
ただ高みへと その果てへと
天を 天だけをみつめ









・・・ 昔、人魚だった


海神は、その人魚の 高潔さをおそれた
両生類が陸をめざしたように
海界をそのはじめから あいつが変えてしまわないかと

だから、人に生まれかわらせたんだ


小さな島の 国の


小さな女 に




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