Midori/月乃助
は海の厨子
艶かしく尾をよこたえ
爪弾く琴の音が、髪をふりみだし
叫び声を あげはじめる
海は、鞭うたれ
きっちり 紡いでいたはずの水の糸をとく
心をさかなでする 荒れ狂う波
( あいつは時に琴線をたちきった
海男神さながら
海獣たちが玉杓で水をそそいだ
それは、伝説 )
指をやすめれば
無声の 波はすがたをけし
鏡の海のおもてに 星の明かりが
往き惑い
寂々
わかろうと
論理も 哲学さえも
なんの役にもたちは、しない
あいつの魂は、海の炎の湧泉
螺旋の途を さかのぼる
わき目も触れず
ただ高みへと その果てへと
天を 天だけをみつめ
*
・・・ 昔、人魚だった
海神は、その人魚の 高潔さをおそれた
両生類が陸をめざしたように
海界をそのはじめから あいつが変えてしまわないかと
だから、人に生まれかわらせたんだ
小さな島の 国の
小さな女 に
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