エイトビット摂氏三十六度/魚屋スイソ
 
板張りになっている壁の節目から差し込んだ陽の光が食い込んでいる。きみはこの街に住んでいながら、この街とは無縁の、薄氷か新雪のように冷たく滑る肌をしている。ゲームボーイを握るぼくの手は、熱を帯びた鱗にまみれてしまっている。魚類や爬虫類は、外気の温度によって体温を変化させることができるらしい。画面に敵が現れる。ばくは何の動物なのだろう。どこに帰属しているのだろう。親指で丸いボタンを押す。コマンドを入力して、画面の敵にダメージを与える。コマンドを入力して、敵にダメージを与える。コマンドを入力して、ダメージを与える。コマンド、ダメージ、コマンド、コマンド。喉が渇いている。カモメの鳴き声みたいな音をさせて敵
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