聞こえないうた/破片(はへん)
 
子どもたちの語彙が拙いから。

とんぼ
だけど

高いビル
飛行機
ねこ
ぬれてる
もうツバキが、
だって
ともだち
晴れ
寒い
/ぼくらの/聞こえないうた/呼ばないで

拙いから。子どもたちのひらけた世界を、わたしたち大人が、かわりに、描出してやる営み。

注釈のような仰々しい散文が、降り注ぐ。
寒さや飢餓に墜落したとんぼ、何処へ行ったの。
その腹、遠目にプラスティックのような軽い硬さ、
けれど容易に押し潰せる、齟齬に、
叫いてください。
一度も、雨を浴びたことのない椿の首が、落ちる。
濡れそぼって膨張した猫の毛を撫でてやること。
放射冷却の厳
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