13番目の春/梅昆布茶
 
窓を開けると校長先生が欠伸をしていた

校庭ではポニーテールが僕に微笑んだ
片えくぼを連れて

まだ風は冷たかったが沢山の蕾が輝いていた

遠くの山では雪も消えはじめ
柔らかな表情へと変貌してゆく

僕たちはまだ密かに手を繋いで帰った
別れの予兆さえまだ見えなかったのだ
君の瞳のなかの

風は空へ舞いあがった音もたてずに
時は韻を踏んでいったかろやかに

きみが手を降った窓からは何が見えただろう

僕は君の瞳の外れにたたずんでいた脆い彫刻のように

破局という主題は季節のなかに溶け去ってゆき
風景も遠のいてふとわれにかえる

僕の見ていたものは
ただ春の風のいたずらだったのかもしれないと思った



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