檻/中川達矢
 
ど、まだいたい。他に対処の仕方などあるだろうか。いくら、インターネットで 検索しようと人とつながろうと、おなかのいたみは、おなかのいたみのままだ。お金は、おなかのいたみをなおさない。

ガラスは、毎夜毎夜、その姿を変える。さっきまで見せていた向こうの世界を、こちらの世界にしてしまう。罪だ。夜のガラスは罪人だ。お前なんかに、募金をしてやるものか。

サイレンは、その音を低くして消えていった。けれど、その姿はガラスのせいで見えない。おなかのいたみは、こちらの世界に残されたまま。こいつをおりの中へ、連れて行ってはくれないのか。

知りすぎた、おりの中の世界。サイレンは希望だった。希望の音だった。けれど、罪を運んではくれなかった。

ぼくの住む街で、ぼくはおなかの中に罪を抱えることしかできなかった。

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