薄闇の入り口/田島オスカー
もっとずっと確かなこと
だったのだと思う
何も知らなかった
わたし
日が沈んでゆく
窓から見えるのは 山
相変わらずの景色は
三年間ずっと変わらない
授業で「第三セクター」の例としてよくでる
田舎電車は 少し揺れる
本当はまったく揺れていないのかもしれない
わたしの浅はかさも 前とは少しも変わっていなかった
だんだんと寒くなってきて
歩く道がなんだか長く伸びてゆくような
椿が咲いている
白に桃 じわり
立ち止まって毎日 見てしまう
昨日ついに ぽとり
あの声を聞いた後だったので
かなしくて 道端で泣いた
何も変わらない
何も変わらない
いつか変わるかもしれない
わからないのね それでもいいよ
薄闇に椿 それくらいの
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