大きなお世話/千波 一也
 






大きなお世話は
まるで教科書
段ボール箱のなかで
日の目を見ない
ほこりの
ひとつ

売ろうと思えば
それなりに
買い手もあろうが
わざわざ
引っ張り出してくるほどの
余裕を
世間は
失っている





大きなお世話に
日付を記すと
なぜだか
安らぎが
わいてくるから
作法を
変えながらも
その
習わしは
絶えていない





大きなお世話が
降り出しそうな
予感が
したら
それなりの
身仕度を
したものだけれど

遠回りでも
それが
いちばん
近くて
身軽な
はずだったけれど





大きなお世話は
待ち過ぎた
おそらく
あまりに
待ち過ぎた
たやすく誰かを
裏切らないで
傷つけないで
済むように
自らを
もっとも
犠牲にして

大きなお世話は
待ち過ぎた







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