父のブランコ/Lucy
高度を上げていくなら良かった
そよ風にくすぐられ
雲と会話し
空の匂いを嗅ぎながら
チョウチョのようにスカートをひるがえし・・
お父さん
あなたはいつもそうやって
私の夢を無造作につぶす
あなたの思い込み
揺るがぬ自信
強引な加速
価値の押しつけ
いつだってそれが私を追い詰めた・・・
怖さの余り
パニックを起こしたのではなかった
私はロープから両手を離した
一番低いところでタイミングを計り
とび降りたつもりだったけど
体はふわりと空を飛んだ
次の瞬間
地面にしゃがみこむ格好で落ちた
あごとひざがぶつかり
その両方が切れて血が出た
「手を離すやつがあるか・・・。」
父は狼狽していた
見ていた母も驚いて
言葉少なに父を責めた
あの日
父の有頂天を打ち砕き
ただ子どもを喜ばせようとしたかっただけの
無邪気で不器用な彼の善意を
踏みにじって
幼い私は
それでも父を許さなかった
戻る 編 削 Point(23)