ぬりつぶし/ドクダミ五十号
 
木炭で描かれた下書きは

筆を誘導しないのだ

ぼんやりを乗せた画面に

確認としてあるだけだ

なぜ確認をなぞる必要がある


強調したい性的な欲求は

しなやかに伸びる肢体を求め

木炭の其れを逸脱する


時に貧乏な絵描きは

新たな綿布を購入出来ず

肌に付けば烈火の痛みを伴う

安価な薬剤とパレットナイフで

削ぎ取るのだ乗せた己の思いを


手の甲に痛みが走る

削ぎ取られたものの怒りがそうする

絵描きは知っているなぜなのかを

残酷を己が成しているからだ


あらわれた木炭の下書きは

当然の様に現れて
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