喪服/salco
初めて見えた
死は全てを打ちのめす叩き潰す
人ははたと転がる
蝿のようにあっけなく
涙は落ち
黒の上で染みとなり
掻き消える
一つの世界が終わった
まるで脱皮のようだ
女は実感していた
昨日までの実存は永劫に消え去り
その時から内を満たす虚無の外側では
昨日の姿と絶縁させられた肉塊がなまなまと
しかし一分の変貌もなく生き蠢いている
死に触れ生皮を一枚剥がれる度に
グロテスクな、生涯羽化せぬイモムシは
粘膜を刺す喪失の疼痛に苛まれ
身をよじる
しかし何一つ変わらず亦変えず
のうのうと生き続けるのだ
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