半島の午後を/梅昆布茶
 
そのジャケットにはかもめが飛んでいた

水晶の静寂が永遠の砂から響いて

僕の胸ポケットの中には人生の請求書しかなかったのだけれど


静謐がほしかったそれ以上に孤独が

体のすべての細胞が冷え切って宇宙の温もりを懐かしんでいた


かもめは彷徨の象徴で

河口ちかくには南風がわずかに吹いていたかもしれない


僕はあの半島の午後を好んで歩いた

軽いリュックの重みを感じながら雲の影を追って


麦畑の金色の揺らぎに隔離された自由を感じていた


灯台への道はなだらかな半島を縫うようにして

手招いていたっけ


ワーグナーのローエング
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