リズムのない夜/番田
寂しい歌を聴いていた
それは 流れていた
肌寒い部屋の中を
過去の記憶を呼び起こすかのように
悲しい風景を連れてくるのだった
僕が 昨日
無印で 目星をつけていた
毛皮のコートは売れてしまっていた
あのコートは
僕が今日から着るはずだったのだが
それが 今 誰かの手にあるという事実
暖かに感じられるはずの
今日も 寒い夜は
身を切るような 光がはじける
秋葉原で
かつては手の届かなかった メモリが
まるで 使い古された
ゴミ捨て場のがらくたのように
放り投げられているみたいな心
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