小さな音だけがはっきりと聞こえている/ホロウ・シカエルボク
生きる術がもうないというなら
生きることなど考えずに生きりゃあいい
すべてを賭けたつもりでもどこか妥協があるように
すべてなくしたはずの時でもどこかに余りがあるものさ
路面電車のガチャつく音はもう二、三度で今日は最後
ぼんやりとディスプレイを眺めつづけて眠くなったら眠るだけ
夢じゃ毎晩奇妙な虫が現れて
動けない自分にじりじりとにじり寄って来る
「その虫はお前自身だ」
訳知り顔の貰いもののハードロックカフェのくまのぬいぐるみ
本棚の上で足を組んでこちらを見下ろしている
生きる術がもうないというなら
生きることなど考えずに生きりゃあいい
すべてを賭
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