ただならぬ魚/オキ
日は疾うに沈んで
間もなく川面に
星が瞬きはじめるだろう
澱みには
ただならぬ魚が潜んでいる
姿は見えなくても
気配が匂う
どうしてそんな思いを
抱いてしまったのか
目には見えなくても
信じることはできるかのようだ
そのしるしとして
終電車の時間なのに
彼は駄々っ子のように
動けないでいる
静かに水を湛える澱み
その奥に潜む魚を釣り上げ
P子への積年の思いを
遂げようというのか
それとも
諦めようというのか
釣り糸を垂れたまま
釣り人は一本の古木のように
堅く動かない
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