NOX/すみたに
 

 定められている
 掴む術をもたない

 雄牛の駆けずり回る荒野の真ん中
 運命を受け入れるため
 両目でも潰すか
 背中でも焼くか
 傷口を焼けば
 膿も血もとまるだろう
 煙草でたりるなら
 ガスバーナーは要らない
 ガソリンは湧きださない
 火炎放射機は開発されない
 
 わっと噴き出す、スプリンクラーが
 虹色を作りだす
 玉蜀黍畑を幼児が縫い廻る。
 死んだ祖父も蘇り語りかけている、
 氷の解けたレモネード、
 崩れずに灰となった葉巻。
 そして丁寧に膨らむシャボン玉、
 変幻する中に映しだされた
 歪んだ顔にふと見たこともない
 一番の笑顔を見つける、

 けれどもぱっと弾けたでしょう
 上空高くに飛び去っていた
 風船がはちきれて
 冷たいゴムの破片になった時
 朝日が射しこんだ路地で眼醒めとともに
 消されたテレビ、だから信じなくてもいい、
 全ては夜の見せたこと、
 昼には見えないだけのこと。 

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