けもの道/Seia
私がまだちいさかったころ
薄く引かれたグレーの線が
何故かたまらなく好きだった
ぬりえは色を重ねることを先に終わらせ
最後にふちどりを残すほど
夢中で線を辿っていった
そういえば、
けもの道はいつか
街道に変わるだろうか
そんなことをふと考える
そういえば、
地図を書く作業は
ぬりえに似ていないか
そんなことをふと考える
大きさも足あとも違う者達が
ひとつ また ひとつと
森林を踏み固めていく
最初に引かれた水彩のような線に
ひとり また ひとりと
乾かぬうちに重ねていく
そういえば、そういえば、
そういえば、
私がまだちいさかったころ
ハスキーに追い掛けられたあぜ道を
今では四角いケモノが走っている
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