について/knit
柔らかな白紙が
一歩ごと
白さを増し
やがて
新雪の上の足跡のように
言葉だけが残る
歩道橋の上から
あなたの生まれた
病室が見える
夜を越えるたび
淡くなっていくその傷は
意味だけを
ずっとたずさえていく
私のあこがれ
雲の縁からあふれて
降ってくる
いくつかの話が
私に残る
余白が打ち寄せて
足元が乾く
あなたは言った
その広がりは
あの人に似ている と
特に
その横顔に
電光板に
ワスレナグサ と
掲げるバスが
私たちをはねた
そうして
あざやかな惨事は
文字に起こされ
ひっそりとついえる
あなたを忘れない
と私は言った
その先にある
誰のものでもない
残雪を
踏みしめる音を
あなたは聴いていた
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