鍵のない部屋/かんな
 
がないね。そうだね。そうかそうか。
といった風にきみは窓から空を見上げた。
あの空から降り落ちてくる雪の結晶の
どれかがこの部屋の鍵の型に一致するんだ。
スタンドミラーの前のわたしはきょとんとしてそれを聴いていた。
雪は降っていない。
まあゆっくり鍵が降ってくるのを待っていようか。
正月休みというのはそのためにあるんだよ。
知ってたかな。いや知らない。そう。
会話が淡く溶けていくような気がした。春の近さを勘違いしてしまう。
わたしも窓から空を見上げた。
もう少しふたりきりでいようか。





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