鍵のない部屋/かんな
 

鍵のない部屋にわたしと
きみがいた。年明けにツタヤからレンタルしたマンガ本を
読みながら会話をすることもなかった。
窓際にはカラーボックスが一つある。
「よくわかる地理」や「日商簿記3級」「神経情報生物学入門」
といった書籍がある。本とは何だろう。
情報だろうか。真実を見つめる道具だろうか。
きみとの会話の糸口だろうか。
その隣にニトリでよく展示してるようなスタンドミラーがある。
わたしときみをよく映し出していた。
ダイニングテーブルの四脚のイスの一つに座って
本を読むきみを尻目に、わたしは鏡に向かった。
体重の増加が気になり、ウエストラインが気になるこの頃であった。
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