ともだち/片野晃司
 
つの頂点をもつ山影がみえる。きみは
あの山が見渡すこの平野を覆う蛹の殻のように、すべてが
言語で説明されているのを見ることができるだろう。でも
それはあの山から見渡せるこの平野に限ってのことだ。その
先のことはぼくにはわからない。きみとぼくの
すべてのはじまりがどこにあって、きみとぼくの
すべてのおわりがどこにあるのか、いま
こうして詰め込まれ向かい合っているぼくにはわからないこと。たとえば
この先のページのことをいまぼくが教えないように。充満した
ひどくひといきれにもみしだかれるこの通勤電車の、きみに
向かい合い触れ合うぼくときみがこれまでになく密着して、充満した
ぼくとき
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