越冬/たちばなまこと
結晶の白いシャワー
恩寵がふりむかせた光のはしご
大気圏からの使いは 一冬の住みかをさがす
意図しない早起きの終週の締めくくりには
水分を奪われてゆく洗い髪のはぐれ糸が
はんなりの追い風にそそのかされて 視界を蛇にする
(ほうら 乱れて 走れ と悪名高くも魅力的な天使が
半透明の羽を ひとゆらぎさせる。)
清い香りがたちこめるコートの中に
封印していたはずの匂いがいる
私は迷子ではなくて
触手から逃れ 拾われたうさぎ
寂しくては死んでしまうという言い訳は
人肌が恋しいからとカーディガンを脱ぐのと同じ
触れられるためにビーズを刺せば
涙の星の川を泳いでくれそう
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